ポアソン分布(Poisson distribution)は離散型の確率分布です。ポアソン分布は一定間隔の時間で発生する事象の数を表します。もう少し具体的には「ある時間の間に平均で\(\lambda\)回発生する事象があったとき、この事象が\(X=k\)回発生する」ということを考えます。このとき、確率変数\(X\)はポアソン分布に従うといい、記号\(X\sim Po(\lambda)\)と表します。似たような分布に指数分布というものがありますが、こちらは連続型の確率分布で、次に事象がはっせいするまでの期間をあらわす確率分布になります。
もう少しポアソン分布の具体例を取り上げると、「10個製品を制作した時、平均して1個不良品が出てくる」という機械があったとします。この機械を使って1000個製品を制作した時、出てくる不良品の数を考えます。このとき、不良品の数を\(X\)としたとき、\(\lambda=100\)のポアソン分布に従います。
目次 [hide]
ポアソン分布の基本情報
※ 表は横にスクロールできます。
パラメータ | \(0 < \lambda\) |
確率変数の範囲 | \(0\leq x \) \(x\)は整数 |
累積分布関数 | \(\displaystyle\sum_{k=0}^{x}\frac{\lambda^{k}e^{-\lambda}}{k!}\) |
確率関数 | \(\displaystyle\frac{\lambda^{x}e^{-\lambda}}{x!}\) |
積率母関数 | \(\displaystyle\exp\left[ \lambda\left\{ \exp[t]-1 \right\} \right]\) |
確率母関数 | \(\displaystyle\exp\left[ \lambda(t-1) \right]\) |
特性関数 | \(\displaystyle\exp\left[ \lambda\left\{ \exp[it]-1 \right\} \right]\) |
キュムラント母関数 | \( \displaystyle\lambda\left( \exp[t]-1 \right) \) |
\(r\)次キュムラント | \( \lambda \) |
期待値 | \( \lambda \) |
分散 | \( \lambda \) |
歪度 |
\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{\lambda}}\) |
尖度 | \( 3+\displaystyle\frac{1}{\lambda} \) |
証明一覧
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確率密度関数と累積分布関数
\(\lambda=0.5,\ 1,\ 5,\ 10\)に対応するポアソン分布の確率密度関数は次のようになります。
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\(\lambda=0.5,\ 1,\ 5,\ 10\)に対応するポアソン分布の累積分布関数は次のようになります。
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漸化式によるポアソン確率の計算
ポアソン分布に従う確率変数\(X\sim Po(\lambda)\)について、\(\mathrm{P}(X=k+1)\)は\(\mathrm{P}(X=k)\)を用いて次のように表すことができます。
\mathrm{P}(X=k+1) = \frac{\lambda}{x+1}\mathrm{P}(X=k),\ \ \ \ \mathrm{P}(X=0) = e^{-\lambda}
\end{align}
2項分布とポアソン分布
2項分布に従っている確率変数\(X\sim Bin(n,p)\)の確率関数は
_{n}C_{x}p^{x}(1-p)^{n-x}
\end{align}
となります。この2項分布において\(\lambda=np\)とおき、\(\lambda\)を一定に保ちながら、\(n\rightarrow \infty\)としたものは、2項分布の確率関数は
\frac{e^{-\lambda}\lambda^{x}}{x!}
\end{align}
に収束し、ポアソン分布の確率関数と一致します。
ポアソン分布と正規分布
パラメータ\(\lambda\)のポアソン分布は、\(\lambda\rightarrow\infty\)となったとき、期待値\(\lambda\)、分散\(\lambda\)の正規分布に従います。
ポアソン分布の再生性
確率変数\(X_{1},\cdots,X_{n}\)が互いに独立に、パラメータ\(\lambda\)のポアソン分布に従っているとき、
X_{1}+X_{2}+\cdots+X_{n}
\end{align}
はパラメータ\(\displaystyle\sum_{i=1}^{n}\lambda_{i}\)のポアソン分布に従います。
※積率母関数については以下の記事をご覧ください。
証明
積率母関数を使って証明していきましょう。\(X_{i}\sim Po(\lambda_{i}),\ i=1,\cdots,n\)についてそれぞれの積率母関数は
M_{X_{i}}(t) &= \exp\left[ \lambda_{i}\left( \exp[t]-1 \right) \right],\ \ \ i=1,\cdots,n
\end{align}
となり、
S &= X_{1}+X_{2}+\cdots+X_{n}
\end{align}
とすると、\(S\)の積率母関数は
M_{S}(t) = \mathrm{E}[\exp[St]] \\
&= \mathrm{E}[\exp[(X_{1}+X_{2}+\cdots+X_{n})t]] \\
&= \mathrm{E}\left[\prod_{i=1}^{n}\exp[X_{i}t]\right] \\
&= \prod_{i=1}^{n} \mathrm{E}\left[\exp[X_{i}t]\right] \\
&= \prod_{i=1}^{n}M_{X_{i}}(t) \\
&= \prod_{i=1}^{n} \exp\left[ \lambda_{i}\left( \exp[t]-1 \right) \right] \\
&= \exp\left[ \sum_{i=1}^{n}\lambda_{i}\left( \exp[t]-1 \right) \right]
\end{align}
となり、パラメータ\(\displaystyle\sum_{i=1}^{n}\lambda_{i}\)のポアソン分布の積率母関数になっていることが分かります。積率母関数の性質から、\(S\)はパラメータ\(\displaystyle\sum_{i=1}^{n}\lambda_{i}\)のポアソン分布に従います。
□
※積率母関数の性質は以下の記事をご覧ください。
パラメータ推定
パラメータ\(\lambda\)の最尤推定量\(\widehat{\lambda}\)は
\widehat{p} &= \bar{X}
\end{align}
となります。
ポアソン分布と関連深い分布
ポアソン分布と関連深い分布を図・表でまとめています。各分布の詳しい情報は表の中のリンクからお願いします。

ベルヌーイ分布 | ベルヌーイ試行を1回行うときの分布 |
カテゴリ分布 | 1回の試行で\(k\)通りのパターンの中からどれかが得られる可能性がある試行を表す分布 |
2項分布 | \(n\)回のベルヌーイ試行で\(x\)回成功するときの分布 |
幾何分布 | ベルヌーイ試行を複数回行う上で、初めて成功するまでの 試行回数を表す分布 |
超幾何分布 | ベルヌーイ試行を複数回行っていく上で、その都度成功確率が 変化する分布(有限個のアタリくじなど) |
負の2項分布 | ベルヌーイ試行を複数回行う上で、\(k\)回成功するまでの 失敗する回数を表す分布(\(k=1\)の場合、幾何分布になります) |
多項分布 | 成功・失敗の2種類だけでなく、試行の結果が 複数個ある場合の分布を表します |
ポアソン分布 | 成功確率が極端に小さく(つまり滅多に起こらない)、 試行回数が極端に大きい場合の分布 |