学習レベル:高校生 難易度:★☆☆☆☆
累積分布関数はある値以下をとる確率のことです。サイコロの例でいくと、4以下が出る確率を求めるための関数が累積分布関数にあたります。この記事では、累積分布関数の定義および性質を紹介していきます。
累積分布関数の定義
式で見ると難しそうですが、実際に累積分布関数を求めてみると、非常に簡単です。
離散型の例(サイコロの場合)
サイコロの例で累積分布関数を求めてみましょう!
まず、確率変数と確率についてまとめてみると下のようになります。
確率変数\(X\) | \(1\) | \(2\) | \(3\) | \(4\) | \(5\) | \(6\) |
確率\(\mathrm{P}(X)\) | \(\frac{1}{6}\) | \(\frac{1}{6}\) | \(\frac{1}{6}\) | \(\frac{1}{6}\) | \(\frac{1}{6}\) | \(\frac{1}{6}\) |
サイコロの目が3以下になる累積分布関数(つまり\(x\leq 3\)となる確率)は$$\mathrm{P}(X\leq 3)=\mathrm{P}(X=1)+\mathrm{P}(X=2)+\mathrm{P}(X=3)=\frac{1}{2}$$となります。
連続型の例
次のような確率密度関数を考えてみましょう。
\[
f(x)=\left\{
&2x\ \ (0\leq x\leq 1) \\
&0\ \ \ (xがそれ以外)
\end{align}
\]
これは確率密度関数になっています。まずどんな\(x\)に対しても\(f(x)\geq0\)が成り立ちます。そして全積分すると
\int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx & =\int_{-\infty}^{0}0dx+\int_{0}^{1}2xdx+\int_{1}^{\infty}0dx \\
&= \left[ x^{2} \right]_{0}^{1} \\
&= 1
\end{align}
となるので、確率密度関数になっているいることはわかります。
※ 確率密度関数に関しては<確率関数・確率密度関数の記事>をご覧ください。
確率変数\(X\)が\(u\)以下になる累積分布関数\(F(u)\)を計算してみると
\[
F(u) = P(X\leq u) =\int_{-\infty}^{u}f(x)dx
=
\left\{
&0\ \ \ (u\leq 0)\\
&u^{2}\ \ \ (0<u\leq1)\\
&1\ \ \ (1<u)
\end{align}
\]
となります。
累積分布関数の性質
累積分布関数の性質をいくつか紹介していきます。
1.確率変数で\(X_{1}\leq X_{2}\)が成り立つとき、累積分布関数\(F(x)\)は必ず$$F(X_{1})\leq F(X_{2})$$となります。(つまり累積分布関数は広義単調増加になります。)
※ 広義単調増加については<単調増加・単調減少の記事>を参照してください。
2.確率変数\(X\)について、累積分布関数\(F(x)\)を用いて次の式が成り立ちます。$$\mathrm{P}(a\leq X\leq b)=F(b)-F(a)$$
累積分布関数のまとめ
累積分布関数はある値以下をとる確率のことであり、確率関数・確率密度関数を用いて定義できます。同時確率や条件付き確率でも用いることができます。連続型の確率変数に対して、累積分布関数は確率密度関数の積分で定義されますが、逆に累積分布関数を微分すると確率密度関数になります。
※ つまり、連続型の確率変数\(X\)の確率密度関数\(f(x)\)は累積分布関数\(F(x)\)を用いて次のように表せます。$$f(x)=\frac{d}{dx}F(x)$$