学習レベル:大学生 難易度:★★☆☆☆
原点まわりのモーメントを求めるための関数に積率母関数というものがあります。積率母関数を用いれば期待値や分散を求める際に、とても楽になります。加えて、積率母関数と確率分布と1対1の対応があり、積率母関数が異なるデータは確率分布も異なるという性質を持っています。この記事では、確率分布が多変量だった場合を紹介しています。基本的には多変量でも同じように定義します。
積率母関数の定義
確率母関数の定義(多変量)
確率変数\(X,\ Y\)の同時確率分布の積率母関数は次のようになります。
\begin{align}M_{XY}(t_{1},\ t_{2})=\mathrm{E}[e^{t_{1}X+t_{2}Y}]\end{align}
ここの定義では変数は2つですが、3個以上でも同様の定義となります。
積率母関数の性質
多変量であっても、基本的な性質は変わりません。単変量の積率母関数については以下の記事をお読みください。
以下では、積率母関数の性質の中でも重要なものをまとめています。
確率母関数とモーメント
積率母関数\(M_{XY}(t_{1},\ t_{2})\)を用いて、様々な期待値を与えることができます。
\begin{align}
\mathrm{E}\left[ X \right]&= \mathrm{E}\left[ XY^{0} \right] = \left.\frac{\partial}{\partial t_{1}}M_{XY}(t_{1},\ t_{2})\right|_{t_{1}=t_{2}=0} \\
\mathrm{E}\left[ X^{2} \right]&= \mathrm{E}\left[ X^{2}Y^{0} \right] = \left.\frac{\partial^{2}}{\partial t_{1}^{2}}M_{XY}(t_{1},\ t_{2})\right|_{t_{1}=t_{2}=0} \\
\mathrm{E}\left[ XY \right]&= \left.\frac{\partial^{2}}{\partial t_{1}\partial t_{2}}M_{XY}(t_{1},\ t_{2})\right|_{t_{1}=t_{2}=0} \\
\mathrm{E}\left[ X^{m}Y^{n} \right]&= \left.\frac{\partial^{m+n}}{\partial t_{1}^{m}\partial t_{2}^{n}}M_{XY}(t_{1},\ t_{2})\right|_{t_{1}=t_{2}=0} \\
\end{align}
積率母関数と確率分布
積率母関数が一致するとき、確率分布も一致します。
確率分布は様々なものがありますが、積率母関数が一致するものは確率分布は同一のものだけとなります。この性質は積率母関数の中でも重要なものです。