学習レベル:大学生 難易度:★★☆☆☆
離散型の確率変数について階乗モーメントを求めるための関数に確率母関数というものがあります。あまり見かけることはないですが、確率母関数を求められたら期待値、分散の計算が非常に楽になります。
確率母関数の定義
離散型の確率変数\(X\)は\(0,1,2,\cdots\)という非負の整数値をとるものだとします。式で表すと
& \mathrm{P}(X=j) =p_{j},\ \ \ \ \ j=0,1,2,\cdots \\
& \sum_{j=0}^{\infty}p_{j} = 1
\end{align}
となります。このような、確率変数に対して確率母関数が定義されます。
確率母関数に関しては次のような性質があります。
確率母関数と確率
確率母関数\(G_{X}(t)\)を用いて、\(X=r\)となる確率を表すことができます。
この式の計算方法ですが、まず\(G_{X}(t)\)を\(t\)で\(r\)回微分した後に\(t\)に\(0\)を代入します。
証明自体はとっても簡単です。実際に右辺を計算してみましょう。
\left.\frac{1}{r!}\cdot\frac{d^{r}}{dt^{j}}G_{X}(t)\right|_{t=0} &= \frac{1}{r!}\cdot r!p_{r}+\left.\frac{1}{r!}\sum_{j=r+1}^{\infty}j!\cdot p_{j}t^{j-r}\right|_{t=0} \\
&= p_{r}
\end{align}
確率母関数と階乗モーメント
確率母関数を用いて、階乗モーメントを求めることができます。
この式を階乗積率母関数と呼びます。
この式を証明してみましょう!
まず、\(t^{X}\)を\(t=1\)のまわりでテイラー展開してみます。
t^{X} &= 1 + X(t-1) + \frac{1}{2!}\cdot X(X-1)(t-1)^{2}\\
&\ \ \ + \frac{1}{3!}\cdot X(X-1)(X-2)(t-1)^{3}+\cdots
\end{align}
この式を用いると、\(k\)次の階乗モーメント(\mu_{[k]}^{\prime})を使って
G_{X}(t) &= \mathrm{E}\left[ t^{X} \right] \\
&= 1 + (t-1)\mathrm{E}[X] + \frac{1}{2!}\cdot (t-1)^{2}\mathrm{E}[X(X-1)]\\
&\ \ \ + \frac{1}{3!}\cdot (t-1)^{3}\mathrm{E}[X(X-1)(X-2)]+\cdots \\
&= 1 + (t-1)\mu_{[1]}^{\prime} + \frac{1}{2!}\cdot (t-1)^{2}\mu_{[2]}^{\prime} + \frac{1}{3!}\cdot (t-1)^{3}\mu_{[3]}^{\prime}+\cdots
\end{align}
と表すことができます。この式から右辺を\(t\)について\(k\)回微分すると
\frac{d^{k}}{dt^{k}}G_{X}(t) &= \mu_{[k]}^{\prime}+(t-1)^{k-1}\mu_{[k+1]}^{\prime}+\cdots
\end{align}
となることから、\(t=1\)を代入すると
\left.\frac{d^{k}}{dt^{k}}G_{X}(t)\right|_{t=1} &= \mu_{[k]}^{\prime}
\end{align}
が成立します。
モーメントに関する関連記事
・モーメント:モーメントについて定義しています。
・積率母関数:\(k\)次の原点まわりのモーメントを求めるための関数となります。
・特性関数:積率母関数を一般化したものになります。
・キュムラント母関数:キュミュラントを用いて積率母関数を表します。
・母関数間の関係のまとめ:母関数間の関係をまとめています。