確率分布

ガンマ分布

 ガンマ分布(gamma distribution)は、連続型の確率分布です。ガンマ分布は「ある期間\(f\)の間に\(1\)回起こる事象が、\(n\)回起こるまでにかかる時間」を表します。もう少し具体的な例を挙げると、「100年に1回の割合で、地震が発生するとき、地震が2回起こるまでにかかる期間はどのくらいになるか」を考えたいときに使用されます。
 ガンマ分布の定義から、指数分布と強くつながりがあることも分かります。指数分布はガンマ分布において「ある期間\(\lambda\)の間に\(1\)回起こる事象が、\(1\)回起こるまでにかかる時間」を表すことがすぐにわかります。
※このことは指数分布の記事をお読みください。

 ガンマ分布に従う確率変数\(X\)は、パラメータ\(\alpha,\beta\)を「ある期間\(\beta\)の間に\(1\)回起こる事象に対して、\(\alpha\)回起こるまでの時間」でおくことで、確率変数\(X\)はパラメータ\(\alpha,\beta\)のガンマ分布に従うといい、記号\(X\sim Gam(\alpha,\beta)\)で表します。

ガンマ分布の基本情報

※ 表は横にスクロールできます。

パラメータ \(0 < \alpha,\ \ \ 0 < \beta\)
確率変数の範囲 \(0\leq x \)
確率密度関数 \(\displaystyle \frac{x^{\alpha-1}\exp\left[ -\frac{x}{\beta} \right]}{\beta^{\alpha}\Gamma(\alpha)} \)
ただし、\(\Gamma(\alpha)\)はガンマ関数です。
\(\displaystyle \Gamma(\alpha) = \int_{0}^{\infty}t^{\alpha-1}e^{-t}dt\)
累積分布関数 ①\(\displaystyle \alpha \)が整数のとき
\(\displaystyle 1-\exp\left[ -\frac{x}{\beta} \right]\sum_{i=1}^{\alpha-1}\frac{ \left( \frac{x}{\beta} \right)^{i} }{ i! } \)

 

②\(\beta=1\)のとき
\(\displaystyle\frac{\Gamma_{x}(\alpha)}{\Gamma(\alpha)}\)
ここで、\(\Gamma_{x}(\alpha)\)は不完全ガンマ関数です。
\(\displaystyle \Gamma_{x}(\alpha)=\int_{0}^{x}t^{\alpha-1}e^{-t}dt \)

積率母関数 \(\displaystyle (1-\beta t)^{-\alpha},\ \ \ \ t<\frac{1}{\beta} \)
特性関数 \(\displaystyle (1-i\beta t)^{-\alpha}\)
キュムラント母関数 \(\displaystyle -\alpha\log(1-\beta t)\)
\(r\)次キュムラント \(\displaystyle (r-1)!\alpha\beta^{r}\)
\(r\)次モーメント
(原点まわり)
\(\displaystyle \frac{ \beta^{r}\Gamma(\alpha+r) }{ \Gamma(\alpha) } \)
期待値 \( \displaystyle \alpha\beta \)
分散 \( \displaystyle \alpha\beta^{2} \)
モード \( \displaystyle (\alpha-1)\beta,\ \ \alpha > 1\)
歪度

\(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{\alpha}}\)

尖度 \( \displaystyle3+\frac{6}{\alpha} \)

証明一覧

確率密度関数

様々な\(\alpha,\beta\)に対応するガンマ分布の確率密度関数は次のようになります。

\(\beta=1\)で固定した場合の確率密度関数

\(\alpha=4\)で固定した場合の確率密度関数

ガンマ分布を考える上での基礎知識

(1)ベータ関数

\begin{align}
B(\alpha,\beta) = \int_{0}^{1}u^{\alpha-1}(1-u)^{\beta-1}du,\ \ \ 0\leq u\leq 1
\end{align}

(2)ガンマ関数

\begin{align}
\Gamma(a) = \int_{0}^{\infty}\exp[-u]u^{a-1}du,\ \ \ a>0
\end{align}

(3)ディガンマ関数(プサイ関数)

\begin{align}
\psi(a) = \frac{d}{da}\log\Gamma(a) = \frac{\displaystyle\frac{d\Gamma(a)}{da}}{\Gamma(a)}
\end{align}

ベータ関数とガンマ関数

ベータ関数とガンマ関数には次のような関係があります。

\begin{align}
B(\alpha,\beta)=\frac{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}{\Gamma(\alpha+\beta)} = B(\beta,\alpha)
\end{align}

ベータ関数の基本性質

ベータ関数は以下のような性質を持っています。

\begin{align}
B(\alpha+1,\beta)=\frac{\alpha}{\alpha+\beta}B(\alpha,\beta)
\end{align}

特に\(\alpha,\beta\)が整数のとき、次式が成り立ちます。
\begin{align}
B(\alpha,\beta) &= \frac{(\alpha-1)!(\beta-1)!}{(\alpha+\beta-1)!} \\
B(1,1) &= 1\\
B\left( \frac{1}{2},\frac{1}{2} \right) &= \pi
\end{align}

ガンマ関数の基本性質

ガンマ関数は以下のような性質を持っています。

\begin{align}
\Gamma(a)=(a-1)\Gamma(a-1)
\end{align}

特に\(a\)が整数のとき、次式が成り立ちます。
\begin{align}
\Gamma(a) &= (a-1)! \\
\Gamma(0) &= 1 \\
\Gamma(1) &= 1 \\
\Gamma\left( \frac{1}{2} \right) &= \sqrt{\pi} \\
\Gamma\left( a+\frac{1}{2} \right) &= \frac{(2a)!\sqrt{\pi}}{a!2^{2a}}
\end{align}

ガンマ分布と指数分布

 本記事の冒頭でも書いていますが、ガンマ分布と指数分布は強い関連性があります。ガンマ分布\(Gamma(\alpha,\beta)\)について、\(\alpha=1\)としたときガンマ分布はパラメータ\(\beta\)の指数分布\(Exp(\beta)\)と一致します。

 逆に、確率変数\(X_{1},\cdots,X_{n}\)が互いに独立にパラメータ\(\lambda\)の指数分布\(Exp(\lambda)\)に従うとき、この確率変数の和はパラメータ\(n,\lambda\)のガンマ分布

\begin{align}
X_{1}+\cdots+X_{n} \sim Gamma(n,\lambda)
\end{align}

に従います。

 

ガンマ分布とアーラン分布

 \(\alpha\)が整数のとき、ガンマ分布はアーラン分布と一致します。

 

ガンマ分布とカイ2乗分布

 確率変数\(X\)が、パラメータ\(\alpha,\beta\)のガンマ分布\(X\sim Gam(\alpha,\beta)\)に従うとき、\(2X/\beta\)は自由度\(2\alpha\)のカイ2乗分布

\begin{align}
\frac{2X}{\beta}\sim \chi^{2}(2\alpha)
\end{align}

に従います。

 

ガンマ分布の再生性

確率変数\(X_{i}\)(\(i=1,\cdots,n\))がパラメータ\(\alpha_{i},\beta\)のガンマ分布

\begin{align}
X_{i} \sim Gam(\alpha_{i},\beta)
\end{align}

に従うとき、この確率変数の和もガンマ分布に従い
\begin{align}
X_{1}+\cdots+X_{n} \sim Gam\left( \sum_{i=1}^{n}\alpha_{i},\beta \right)
\end{align}

となります。

証明はとても簡単で、確率変数\(X_{i}\)の積率母関数が\((1-\beta t)^{-\alpha_{i}}\)となることから、確率変数の和の積率母関数は

\begin{align}
M_{X_{1}+\cdots+X_{n}}(t) &= \mathrm{E}[e^{t(X_{1}+\cdots+X_{n})}]\\
&= \prod_{i=1}^{n}\mathrm{E}[e^{tX_{i}}] \\
&= \prod_{i=1}^{n} M_{X_{i}}(t) \\
&= \prod_{i=1}^{n} (1-\beta t)^{-\alpha_{i}} \\
&= (1-\beta t)^{-\alpha_{1}-\cdots-\alpha_{n}}
\end{align}

となります。積率母関数の性質からガンマ分布の再生性がわかります。

 

ガンマ分布とベータ分布

確率変数\(X_{1},X_{2}\)がそれぞれ独立にガンマ分布\(X_{1}\sim Gam(\alpha_{1},\beta),\ X_{2}\sim Gam(\alpha_{2},\beta)\)に従うとき

\begin{align}
\frac{X_{1}}{X_{1}+X_{2}}\sim Beta(\alpha_{1},\alpha_{2})
\end{align}

が成り立ちます。

※ベータ分布については下のリンクからどうぞ

標準ガンマ分布

 ガンマ分布において\(\beta=1\)のとき、ガンマ分布は標準ベータ分布と呼ばれます。

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