学習レベル:大学生 難易度:★★☆☆☆
この記事では正規分布の歪度・尖度を証明付きで解説していきます。歪度・尖度の求め方が分からない方は是非お読みください。歪度・尖度がわからない方は<歪度>・<尖度>の記事を、その他の正規分布の基本情報は<正規分布>の記事をお読みください。
正規分布の歪度・尖度
歪度・尖度を求める際には<歪度の定義>および<尖度の定義>を使用するので、覚えていない方は証明を読む前に一度、目を通しておいてください。
証明
正規分布の性質から、歪度・尖度の定義より期待値によって歪度・尖度の値は変化しません。
※ これは確率変数\(X\)を期待値で引いた\(X-\mu\)についてモーメントをとるので、どんな期待されるを持っていたとしても、モーメントを求める際には期待値が必ず\(0\)になるからです(正規分布の線形関数よりこのことは分かります)。
よって、簡単化のため期待値が\(0\)である正規分布に従う確率変数\(X\sim N(0,\sigma^{2})\)について考えます。歪度・尖度を求める際には\(3\)次モーメント\(\mathrm{E}[(X-\mu)^{3}]\)と\(4\)次モーメント\(\mathrm{E}[(X-\mu)^{4}]\)の計算が必要になります。定義通り計算すると面倒なので、積率母関数から求めていきます。積率母関数について分からない方は以下のリンクからお願いします。
期待値\(0\)の正規分布\(N(0,\sigma^{2})\)の積率母関数は\(M_{X}(t)=\exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right]\)となります。積率母関数がこのようになることは以下のリンクからお願いします。
この積率母関数の第3,4次導関数を求めていくと
M_{X}^{(1)}(t) &= \sigma^{2} t\exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right], \\
M_{X}^{(2)}(t) &= \sigma^{2} \exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right] +\sigma^{4} t^{2}\exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right] \\
&= ( 1+\sigma^{2} t^{2} )\sigma^{2}\exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right],\\
M_{X}^{(3)}(t) &= 2\sigma^{4} t\exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right]+( 1+\sigma^{2} t^{2} )\sigma^{4}t\exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right]\\
&= (3+\sigma^{2} t^{2})\sigma^{4} t\exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right],\\
M_{X}^{(4)}(t) &= (3\sigma^{4}+3\sigma^{6} t^{2}) \exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right]+(3+\sigma^{2} t^{2})\sigma^{6} t^{2}\exp\left[ \frac{1}{2}\sigma^{2}t^{2} \right],
\end{align}
となります。実際、\(1,2\)次導関数を用いることで期待値、分散が
\mathrm{E}[X] &= \left. M_{X}^{(1)}(t) \right|_{t=0} = 0\\
\mathrm{E}[X^{2}] &= \mathrm{Var}[X] = \left. M_{X}^{(2)}(t) \right|_{t=0} = \sigma^{2}
\end{align}
となることも確認できます。積率母関数から3,4次モーメントを求めると、
\mathrm{E}[X^{3}] &= \left. M_{X}^{(3)}(t) \right|_{t=0} = 0\\
\mathrm{E}[X^{4}] &= \left. M_{X}^{(4)}(t) \right|_{t=0} = 3\sigma^{4}
\end{align}
となります。このことから、求めたい歪度\(skew(X)\)と尖度\(kurt(X)\)は
skew(X) &= \frac{\mathrm{E}[X^{3}]}{\sigma^{3}} = 0 \\
kurt(X) &= \frac{\mathrm{E}[X^{4}]}{\sigma^{4}} = 3
\end{align}
となります。
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