学習レベル:大学生 難易度:★☆☆☆☆
この記事では、期待値に関する性質をまとめています。条件付き期待値などにもこの性質は用いることができるので、是非とも覚えておきたい内容です。証明も載せているので、興味のある方はご覧ください。
期待値の性質
期待値の性質
確率変数\(X\)および\(Y\)に対して次の等式が成り立ちます。ただし\(c\)は定数を表します。
(i)\( \mathrm{E}[c] = c \)
(ii)\( \mathrm{E}[X+c] = \mathrm{E}[X]+c \)
(iii)\( \mathrm{E}[cX] = c\mathrm{E}[X] \)
(iv)\( \mathrm{E}[X+Y] = \mathrm{E}[X]+\mathrm{E}[Y] \)
これらは期待値の基本性質になるので、絶対に覚えておいてください。
証明
(i)は当たり前です。定数に平均をとっても定数のままですよね?
(ii)から詳しく見てみましょう。証明は確率変数が連続型だった場合を想定して証明をしていきますが、離散型でも証明は同じです。
(ii)について左辺を変形していきます。
\begin{align}
\mathrm{E}[X+c] &= \int_{-\infty}^{\infty}(x+c)f(x)dx \\
&= \int_{-\infty}^{\infty}xf(x)dx+c\int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx \\
&= \mathrm{E}[X] + c
\end{align}
\mathrm{E}[X+c] &= \int_{-\infty}^{\infty}(x+c)f(x)dx \\
&= \int_{-\infty}^{\infty}xf(x)dx+c\int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx \\
&= \mathrm{E}[X] + c
\end{align}
この変形は期待値の定義および確率密度関数の定義を用いました。
(iii)について左辺を変形していきます。すると、求めたい式が出てきます。
\begin{align}
\mathrm{E}[cX] &= \int_{-\infty}^{\infty}cxf(x)dx \\
&= c\int_{-\infty}^{\infty}xf(x)dx\\
&= c\mathrm{E}[X]
\end{align}
\mathrm{E}[cX] &= \int_{-\infty}^{\infty}cxf(x)dx \\
&= c\int_{-\infty}^{\infty}xf(x)dx\\
&= c\mathrm{E}[X]
\end{align}
(iv)について左辺を変形していきます。
\begin{align}
\mathrm{E}[X+Y] &= \int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}(x+y)f_{X}(x)f_{Y}(y)dxdy \\
&= \int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}xf_{X}(x)f_{Y}(y)dxdy+\int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}yf_{X}(x)f_{Y}(y)dxdy\\
&= \int_{-\infty}^{\infty}xf_{X}(x)dx+\int_{-\infty}^{\infty}yf_{X}(y)dy \\
&= \mathrm{E}[X]+\mathrm{E}[Y]
\end{align}
\mathrm{E}[X+Y] &= \int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}(x+y)f_{X}(x)f_{Y}(y)dxdy \\
&= \int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}xf_{X}(x)f_{Y}(y)dxdy+\int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}yf_{X}(x)f_{Y}(y)dxdy\\
&= \int_{-\infty}^{\infty}xf_{X}(x)dx+\int_{-\infty}^{\infty}yf_{X}(y)dy \\
&= \mathrm{E}[X]+\mathrm{E}[Y]
\end{align}
ただし、\(f_{X}(x)\)は確率変数\(X\)の確率密度関数であり\(f_{Y}(y)\)は確率変数\(Y\)の確率密度関数を表します。
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