確率に関する不等式

リヤプノフの不等式【式と証明を紹介!】

学習レベル:大学生 難易度:★★☆☆☆

 リヤプノフ(リアプノフ)の不等式は、あまり有名な式ではなくマニアックな部類の不等式になります。統計学を研究していく上で、計算方法の手段のひとつとして、知っておくと便利に感じることがあるかもしれません。

リヤプノフの不等式

リヤプノフの不等式(Lyapunov inequality)
確率変数\(X\)に関して、\(\mathrm{E}[|X|^{p}]<\infty\)を満たすものとします(つまり有限であるということです)。このとき\( 0 < q < p \)に対して$$\mathrm{E}[|X|^{q}]^{\frac{1}{q}}\leq \mathrm{E}[|X|^{p}]^{\frac{1}{p}}$$が成り立ちます。この式をリヤプノフの不等式と言います。この式を用いると
\begin{align} \mathrm{E}[|X|] \leq \mathrm{E}[|X|^{2}]^{\frac{1}{2}}\leq \mathrm{E}[|X|^{3}]^{\frac{1}{3}}\leq \cdots \leq\mathrm{E}[|X|^{n}]^{\frac{1}{n}} \end{align}
という式も成り立ちます。

 

 不等式の評価は以下にたくさんの知識を持っているかで、得意か不得意か左右されます。
 リヤプノフの不等式はマニアックな式ですが、ひとつの武器として是非覚えておいてください。

証明

 ヘルダーの不等式を使って証明していきます。ヘルダーの不等式は確率変数\(X,\ Y\)について$$\mathrm{E}[|X|^{t}]<\infty,\ \ \ \mathrm{E}[|X|^{q}]<\infty$$を満たしているものとします。ここで\(q,\ t\)は\(1\)より大きい正の実数で$$\frac{1}{q}+\frac{1}{t}=1$$を満たしています。このとき、

\begin{align}
\mathrm{E}[|XY|] &= \mathrm{E}[|X|^{q}]^{\frac{1}{q}}\mathrm{E}[|Y|^{t}]^{\frac{1}{t}}
\end{align}

が成立しています。ここで確率変数\(Y\)を\(Y=1\)、確率変数\(X\)を\(X=X^{q}\)と書き換えると
\begin{align}
\mathrm{E}[|X|^{q}] &= \mathrm{E}[|X|^{tq}]^{\frac{1}{t}} \\
\end{align}

となります。ここで\(p=tq\)で置き換えると\(q< p\)となります。\(\displaystyle\frac{1}{t}=\frac{q}{p}\)となることを用いると、
\begin{align}
\mathrm{E}[|X|^{q}] &= \mathrm{E}[|X|^{p}]^{\frac{q}{p}} \\
\end{align}

が成り立ちます。両辺を\(\displaystyle\frac{1}{q}\)乗するとリヤプノフの不等式が得られます。

リヤプノフの不等式と絶対モーメント

リヤプノフの不等式から絶対モーメントでは次のような不等式が成り立ちます。

\begin{align}
\upsilon_{1}^{\prime}(a) \leq \upsilon_{2}^{\prime}(a)^{\frac{1}{2}} \leq \upsilon_{3}^{\prime}(a)^{\frac{1}{3}} \leq \cdots \leq \upsilon_{n}^{\prime}(a)^{\frac{1}{n}}
\end{align}

ここで、\(\upsilon_{k}^{\prime}(a)\)は\(a\)のまわりの\(k\)次の絶対モーメントを表します。

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