分散 期待値 確率分布

カイ2乗分布の期待値・分散の求め方【証明付きで解説】

 

学習レベル:大学生 難易度:★★☆☆☆

この記事ではカイ2乗分布の期待値・分散を証明付きで解説していきます。期待値・分散の求め方が分からない方は是非お読みください。その他のカイ2乗分布の基本情報は<カイ2乗分布>の記事をお読みください。

 

カイ2乗分布の期待値・分散

期待値と分散
自由度\(n\)のカイ2乗分布に従う確率変数\(X\sim \chi^{2}(n)\)の期待値・分散は次のようになります。
\begin{align} \mathrm{E}[X]=n,\ \ \ \mathrm{Var}[X]=2n \end{align}

期待値・分散を求める際には<期待値の定義>および<分散の定義>を使用するので、覚えていない方は証明を読む前に一度、目を通しておいてください。

 

証明

 自由度\(n\)のカイ2乗分布の確率密度関数は

\begin{align}
f(x) = \frac{ x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} }{ \Gamma\left( \frac{n}{2} \right)2^{\frac{n}{2}} }
\end{align}

となります。確率密度関数がこのようになることは<カイ2乗分布>をお読みください。
 期待値の定義から、直接計算します。
\begin{align}
\mathrm{E}[X] &= \int_{0}^{\infty}xf(x) dx\\
&= \int_{0}^{\infty}x\frac{ x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} }{ \Gamma\left( \frac{n}{2} \right)2^{\frac{n}{2}} } dx\\
&= \int_{0}^{\infty}\frac{ x^{\left(\frac{n}{2}+1\right)-1}e^{-\frac{x}{2}} }{ \Gamma\left( \frac{n}{2} \right)2^{\frac{n}{2}} } dx\\
&= \frac{n}{2}\cdot 2\int_{0}^{\infty}\frac{ x^{\left(\frac{n}{2}+1\right)-1}e^{-\frac{x}{2}} }{ \Gamma\left( \frac{n}{2}+1 \right)2^{\frac{n}{2}+1} } dx\\
&=n
\end{align}

が成り立ちます。最後の行の式変形は、積分の中身の式
\begin{align}
\frac{ x^{\left(\frac{n}{2}+1\right)-1}e^{-\frac{x}{2}} }{ \Gamma\left( \frac{n}{2}+1 \right)2^{\frac{n}{2}+1} }
\end{align}
を見てみると、この式は自由度\(n+2\)のカイ2乗分布の確率密度関数になっていることから、積分が\(1\)となることを用いました。さらに、途中の式変形では、ガンマ関数の性質
\begin{align}\Gamma(\alpha)=(\alpha-1)\Gamma(\alpha-1) \Rightarrow \Gamma(\alpha-1)=\frac{\Gamma(\alpha)}{\alpha-1}\end{align}
を用いました。
分散も同様にして求めます。まず<分散の定義>の記事から分散は
\begin{align}
\mathrm{Var}[X] &= \mathrm{E}[X^{2}]-\mathrm{E}[X]^{2}
\end{align}

と表すことができるので、\(\mathrm{E}[X^{2}]\)を求めればよいことがわかります。よって
\begin{align}
\mathrm{E}[X^{2}] &= \int_{0}^{\infty}x^{2}f(x) dx\\
&= \int_{0}^{\infty}x^{2}\frac{ x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{x}{2}} }{ \Gamma\left( \frac{n}{2} \right)2^{\frac{n}{2}} } dx\\
&= \int_{0}^{\infty}\frac{ x^{\left(\frac{n}{2}+2\right)-1}e^{-\frac{x}{2}} }{ \Gamma\left( \frac{n}{2} \right)2^{\frac{n}{2}} } dx\\
&= \frac{n}{2}\left(\frac{n}{2}+1\right)2^{2}\int_{0}^{\infty}\frac{ x^{\left(\frac{n}{2}+2\right)-1}e^{-\frac{x}{2}} }{ \Gamma\left( \frac{n}{2}+2 \right)2^{\frac{n}{2}+2} } dx\\
&= n^{2}+2n
\end{align}

が成り立つことから、求めたい分散は
\begin{align}
\mathrm{Var}[X] &= (n^{2}-2n)-n^{2} \\
&= 2n
\end{align}

となります。

-分散, 期待値, 確率分布
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