学習レベル:高校生 難易度:★★☆☆☆
条件付き確率と関連付けてベイズの定理というものがあります。アタリとハズレが入っているくじを考えてみます。自分がくじを引く前にくじが引かれていたとします。このとき自分が引く前にどのくらいアタリ・ハズレが引かれていたのかは分からないものとします。このような状態のとき、自分がくじを引いた結果から、前の人がどのくらいくじを引かれていたのか「原因」を推定したいときがあります。
このように、結果から原因を推定する方法をベイズの定理といいます。この記事では、ベイズの定理について詳しく説明していきたいと思います。
ベイズの定理
結果となる事象を\(A\)、原因となる事象を\(H_{1},\cdots,H_{k}\)とします。
今、私たちが考えたいのは事象\(A\)という結果が得られたとき、事象\(H_{i}\)が起こる確率です。この確率を表すものがベイズの定理です。早速、定理を見てみましょう!
ベイズの定理の証明は下の方に紹介しています。
ここからは具体例でベイズの定理を使ってみましょう!
具体例
2つの工場から作られた製品の中から1個取り出したとき、それが不良品でした。それが工場Aで出荷されたものである確率を求めなさい。
取り出した製品が工場A、Bでつくられたという事象を\(A、B\)とします。さらに、取り出した製品が不良品であるという事象を\(E\)とします。<条件付き確率の記事>で\(\mathrm{P}(E)=0.041\)であることは求めました。このことを用いるとベイズの定理から求めたい確率\(\mathrm{P}(A|E)\)は$$\mathrm{P}(A|E)=\frac{\mathrm{P}(A)\mathrm{P}(D|A)}{\mathrm{P}(E)}=\frac{0.30\times 0.02}{0.041}\approx 0.146$$となります。
ベイズの定理は多少複雑ですが、ベイズ統計学を勉強したい方は、是非ともマスターしておきましょう!
ベイズの定理の証明
ベイズの定理の証明はとっても簡単です。
条件付き確率を勉強しておくとすぐに理解できます。
■証明
まず条件付き確率の定義から$$\mathrm{P}(H_{i}|A)=\frac{\mathrm{P}(H_{i}\cap A)}{\mathrm{P}(A)} = \frac{\mathrm{P}(A|H_{i})\cdot \mathrm{P}(H_{i})}{\mathrm{P}(A)}$$となります。集合論の性質から
A &= A\cap\Omega\\
&= A\cap(H_{1}\cup\cdots\cup H_{k})\\
&= (A\cap H_{1})\cup\cdots\cup (A\cap H_{k})
\end{align}
となります。事象\((A\cap H_{1}),\cdots, (A\cap H_{k})\)はお互いに排反であることを用いると、確率の加法定理から$$\mathrm{P}(A)=\sum_{j=1}^{k}\mathrm{P}(A\cap H_{j})=\sum_{j=1}^{k}\mathrm{P}(H_{j})\cdot\mathrm{P}(A|H_{j})$$となることから$$\mathrm{P}(H_{i}|A)=\frac{\mathrm{P}(A|H_{i})\cdot\mathrm{P}(H_{i})}{\sum_{j=1}^{k}\mathrm{P}(H_{j})\mathrm{P}(A|H_{j})}$$が成立します。
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※ 条件付き確率については<条件付き確率の記事>の記事を参照してください。
※ 確率の排反は<事象の演算の記事>を参照してください。
※ 確率の加法定理は<確率の定義の記事>を参照してください。
ベイズの定理のまとめ
ベイズの定理は得られた結果から、元々の原因が起こる確率を予測するための定理です。主に、繰り返し測定が難しい場合によく使用され、予測・人工知能などによく使用されています。このベイズの定理は、ベイズ統計学の基礎となっているので、ベイズ統計学を勉強していく上ではとても重要な性質になります。