学習レベル:高校生 難易度:★☆☆☆☆
事象の演算を前回の記事で扱いましたが、事象の演算で最も有名な公式ド・モルガンの法則をこの記事で紹介します。公式の紹介と証明を中心に扱うので、ド・モルガンの法則について詳しく知りたいと思っている方にはとても有益な記事になると思います(集合論と同じ議論なので、集合論に自信のある方には物足りないと思います)。
ド・モルガンの法則
早速、ド・モルガンの法則を見てみましょう!
具体的な事象で見てみましょう!
- 「サイコロで2の倍数か、または3の倍数が出る」の余事象は「サイコロで2の倍数が出ず、かつ3の倍数が出ない」となります。
- 「トランプでハート、かつ絵札が出る」の余事象は「トランプでハートが出ないか、または絵札が出ない」となります。
事象演算の中ではよく使用されるので、是非とも覚えておきたい法則となります。もっと詳しく知りたい方は、下の方に書いてある証明を読んでください。証明を追うことができれば、ド・モルガンの法則については完璧だと思います。
ド・モルガンの法則の証明
ド・モルガンの法則の証明を与えます。
「確率の用語」と「事象の演算」「集合論の知識」がどうしても必要になるので、自信がない方はどのような公式かどうかだけ覚えてください!
※ 確率の用語については<確率の用語の記事>をご覧ください。
※ 事象の演算については<事象の演算の記事>をご覧ください。
■証明
まず$$(A\cup B)^{c}=A^{c}\cap B^{c}$$であることを証明します。事象(集合)のイコールを示すためには、$$(A\cup B)^{c}\subset A^{c}\cap B^{c}かつ(A\cup B)^{c}\supset A^{c}\cap B^{c}$$を示せばいいです。
- \((A\cup B)^{c}\subset A^{c}\cap B^{c}\)となることを示します。
任意に根元事象(元)\(e\in (A\cup B)^{c}\)をとります。\(e\in A^{c}\cap B^{c}\)であることを示せばいいことがわかります。
今、示すべきことは\(e\in A^{c}\)かつ\(e\in B^{c}\)です。\(e\in A\)が成立することを仮定します。このとき\begin{align}
e\in A\ \ \ \ &\Rightarrow \ \ \ \ e\in A\ または\ e\in B\\
&\Rightarrow\ \ \ \ e\in A\cup B\\
&\Rightarrow\ \ \ \ e\notin (A\cup B)^{c}
\end{align}
が成り立つことから、これは仮定と矛盾します。つまり\(e\in A^{c}\)が成立することがわかります。同様に\(e\in B^{c}\)も成り立つので、\((A\cup B)^{c}\subset A^{c}\cap B^{c}\)が成立します。 - \((A\cup B)^{c}\supset A^{c}\cap B^{c}\)となることを示します。
任意に根元事象(元)\(e\in A^{c}\cap B^{c}\)をとります。\(e\in (A\cup B)^{c}\)であることを示せばいいことがわかります。
今、示すべきことは\(e\in (A\cup B)^{c}\)です。\(e\in A\cup B\)が成立することを仮定します。このとき\begin{align}
e\in A\cup B\ \ \ \ &\Rightarrow \ \ \ \ e\in A\ または\ e\in B\\
&\Rightarrow\ \ \ \ e\notin A^{c}\ または\ e\notin B^{c}\\
&\Rightarrow\ \ \ \ e\notin A^{c}\cap B^{c}
\end{align}
が成り立つことから、これは仮定と矛盾します。つまり\(e\in (A\cup B)^{c}\)が成立することがわかります。よって、\((A\cup B)^{c}\supset A^{c}\cap B^{c}\)が成立します。
(1.)(2.)を用いると、\((A\cup B)^{c}=A^{c}\cap B^{c}\)が成り立つことが示せました。
もうひとつの\((A\cap B)^{c}=A^{c}\cup B^{c}\)も同様にすれば示せます。
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