学習レベル:中学生 難易度:★☆☆☆☆
代表値(averages)とは、データの分布を特徴づけるための数字です。今回扱う調和平均は比に対する平均を求めるものではありますが、使用方法に戸惑う人も多いと思います。この記事では、調和平均がどのようなものか、またどのような場合に使用すればいいか、具体例も交えて分かりやすく説明していきます。
調和平均とは
調和平均(harmonic mean)は比を表すものの平均を求める際に用いる方法です。
あまり聞いたことがないのですが、どんなデータに使用するんですか?
そうですね!
まずは具体的に例題を見てみましょう!
20km/hじゃなんですか?
20km/hだと実は間違いなんです...
実際に計算してみましょう!
バスの往復距離が100kmだったとしましょう。すると往復するのにかかる時間は$$\frac{100}{25}+\frac{100}{15}\approx 10.67\mbox{(h)}$$となります。平均20km/hだった場合、往復かかる時間は$$\frac{100}{20}+\frac{100}{20}= 10.0\mbox{(h)}$$となってしまうので実際にかかった時間と矛盾が生じてしまいます。
どのように平均を出せばいいんでしょうか?
ひとまず真面目に計算してみましょう!
バスの往復距離を\(d\)(km)とします。このとき、バスが往復にかかる時間は$$\frac{d}{25}+\frac{d}{15}$$となります。求める平均速度を\(v\)(km/h)とするとバスが往復するのにかかる時間は$$\frac{d}{v}+\frac{d}{v}=\frac{2d}{v}$$となります。バスの往復にかかる時間は同じなので、
$$\frac{2d}{v}=\frac{d}{25}+\frac{d}{15}$$という等式が成り立ちます。この式において\(v\)について解くと$$v=\frac{2}{\frac{1}{25}+\frac{1}{15}}=18.75$$となります。この真ん中の式が調和平均の式となっています。
調和平均で解けることはわかったのですが
具体的にどのような場合に使用すればいいのですか?
そうですね。確かに他の平均と比べるとかなり使用方法が分かりにくいものです。使用するデータについては次の章で説明します。
どのようなとき調和平均を用いるの?
少し難しい言葉を用いると調和平均は仕事量に関わるデータに対して用いる平均です。しかし、これだけでは分かりにくいのでもう少し噛み砕いて説明していきます。
仕事量ってなんですか?
仕事量について知るには、はじめに仕事率を知る必要があります。
仕事率:1秒(時間でもいいです)あたりにできる仕事の大きさです。
まだ分かりにくいと思います。もう少し具体的に書くと
・2日で宿題が終わらせるとき仕事率は1/2となります。
・3時間で目的地まで到着するとき仕事率は1/3となります。
このように、仕事率は「ある目標を達成するまでにかかる時間の逆数をとったもの」になります。
仕事量は仕事率と時間をかけたものになります。
調和平均にはどのようにかかわっているのですか?
ここまでくると簡単です!
実は調和平均は仕事量が等しい者同士の仕事率の平均になっているのです。
実際、上のバスの例で当てはめてみてみましょう!
バスが行きは25km/h、帰りは15km/hでした。バスは往復しているので往復する距離は等しくなります。よって、バスの走る速度が仕事率、バスが走る距離がバスの仕事量になります。このことより、バスの平均速度は調和平均で求めればよいことがわかります。
理解するまでかなり時間がかかるとは思いますが、
しっかり復習して自分の物にしていきましょう!
調和平均のまとめ
調和平均は比に関する平均の取り方です。適用するためのデータを判断することが非常に難しいのですが、調和平均は仕事率に関するデータに平均をとります。
その他の平均
・ 算術平均:様々な性質をもつ、最もポピュラーな平均です。
・ 刈り込み平均:異常値に対応するための算術平均のようなものです。
・ 幾何平均:成長率などに用いる平均です。
・ 中央値(メディアン):有限個のデータに対して用いる平均です。
・ 最頻値(モード):データをカテゴリや階級別に分けたときに用いる平均です。